カンヌ映画祭
  Festival de Cannes
  2007/5/16-27

Grand prix des Amerique
(最優秀作品)賞

 BEN X by Nic Balthazar (Belgium / Netherlands)
 A SECRET by Claude Miller (France)

Special Grand-prize of the Jury
(審査員特別)賞

 NOODLE by Ayelet Menahemi (Israel)
Best Director
(最優秀監督)賞
 1 DAY (1 JOURNEE) by Jacob Berger (Switzerland)
Best Artistic contribution
(最優秀芸術貢献)賞
 TERESA: EL CUERPO DE CRISTO by Ray Loriga (Spain)
Best Actress
(最優秀女優)賞

 ANDREA SAWAKTZKI for the film THE OTHER BOY
  by Volker Einrauch (Germany)

Best Actor
(最優秀男優)賞
 FILIPE DUARTE and TOMAS ALMEIDA for the film
 A OUTRA MARGEM (THE OTHER SIDE)
  by Luis Filipe Rocha (Portugal / Brazil)
Best Screenplay
(最優秀脚本)賞
 SAMIRA'S GARDEN by Latif Lahlou,
  screenplay by Latif Lahlou (Morocco)
Innovation Award  D75-TARTINA CITY by Issa Serge Coelo
  (Tchad / France / Morocco)
Public Award for the most
popular film of the Festival
(観客)賞
 BEN X by Nic Balthazar (Belgium / Netherlands)
Golden Zenith for the Best First
Fiction Feature Film
(最優秀第一作作品)賞
 LA CAJA (THE WOODEN BOX) by Juan Carlos Falcon (Spain)
FIPRESCI PRIZE
(
国際批評家連盟賞)
 SAMIRA'S GARDEN by Latif Lahlou (Morocco)
*日本からの出品作品はこちらから



メイン会場の文化施設・メゾヌーブ
レッドカーペットが見えます

概観
 昨年、一昨年と公的機関の助成金がなくなり一時は存続の危機に近い状況に陥ってしまったモントリオール世界映画祭であるが、今年になって盛り返しを見せている。ケベック州の文化機関SODECは同映画祭への助成を再開。訴訟問題にまで発展したテレフィル・カナダとも和解に向かっているという。同映画祭の創立者で現在も代表を務めるセルジュ・ロジック氏の表情は明るく、発言にも自信がうかがえる。もともといくつかの映画祭が共存するモントリオール市の中で、同映画祭は普段から映画に親しんでいる市民に向けた映画祭としての性格をはっきりさせることで老若男女からの幅広い支持を得てきた。空きがちな平日の昼間にも年齢の高いお客さんでまずまずの賑わいを見せ、週末や夜は仕事帰りの人々でごった返していた。上映チケットも割安感のある設定。映画祭の担当者が「情報もそれほどない、未知の映画にトライしてもらいたいので高くはできない」と以前語っていたが、その表れであろう。しかし上映中席を立つ人はほとんどいないと言って良い。自分の趣味に合わないとなると即座に退席する人が後を絶たない映画祭も多い中、あくまでもフレンドリーな趣きを呈しているモントリオール映画祭である。市民に向けた映画祭という性格からか、「観客賞」に重きが置かれている感がある。観客賞にしてもカナダ映画と総合に分かれていたり、各大陸ごとに金賞、銀賞、銅賞が決められる、、、といった具合で賞の数がちょっと多く感じられなくもない・・。


映画上映会場前(写真上)と街の様子(写真下)
たくさんの旗やポスターが飾られ、人々で賑わいます

 プロフェッショナルの人々の関心はまさに同時期に行われるヴェネチア映画祭や、直後に控えるトロント映画祭に行っており、それらの映画祭はせわしなくかつ緊張感が漲っているが、モントリオールは終始リラックスした雰囲気。ゲストはほぼ皆同じホテルに滞在し、毎日夕方のハッピーアワーにはテラスを開放、ゲスト同士の交流の場とするなど、映画祭側がゲスト間のコミュニケーションの場を設ける努力をしている様子がうかがえる。
 DVDブースやインダストリーセンターもホテル内の一箇所にまとまり、効率が良い。DVDブースはヘッドフォンを使用しない視聴者がいたり、DVDを持ち出して自分のパソコンで見ることを許容してしまっていたり、など寛容なのは良い反面、規制をしっかりしてほしいと思える場面もあった。
 北米唯一のフランス語圏の州・ケベックにあって、またパリに次ぐ第二のフランス語圏都市として、フランス映画界からの注目は依然高い。参加している配給業者も地元カナダ以外ではフランスが圧倒的に多く、他にベルギー、スイスなどヨーロッパ諸国がそれに続く。ケベックでの公開を控えたフランス映画のプレミアの場として同映画祭での露出は効果的だとの声もある。フランスからの豪華なゲストが毎回話題にのぼるが、今年はソフィー・マルソーの小特集が組まれ本人も来場、華やぎと話題を提供した。

 映画祭の2週間前に逝去したイングマール・ベルイマン監督は同映画祭との関わりも深く、カタログ中に‘今回の映画祭はベルイマンに捧げる’とあったのが印象的であった。


観客賞を決めるための投票箱


日本からの出品作品
 日本からは「黒帯」と「大奥」の二作品がコンペに出品された。「黒帯」は実際に黒帯保持者である主人公役の俳優が上映後、空手の型を披露、受賞こそ逸したものの観客の評判は上々であった。「大奥」は監督やプロデューサーの来場がなかったのが残念。現地の日本人はもちろんのこと、日本の時代劇エンターテインメントを見ようとする外国人が長い列を作っていた。他部門の出品作品もヴァラエティに富んでおり、一括して日本映画を観ている、という現地在住の日本人の人々にもたいへん好評のようだった。移民の多いカナダにあっては祖国から離れて暮らしている人も多く、‘世界映画祭’でそれぞれの国の「今」を映し出す映画を観るのを楽しみにしている人々は多いのだろうと思われる。



      
映画祭情報トップページへ

Home | お問い合わせ| ©Kawakita Memorial Film Institute All Rights Reserved.