カンヌ映画祭
   Festival de Cannes
  2007/5/16-27

New Currents
 -Pusan Bank Award
   
Life Track  by Guang Hao JIN
(中国・韓国)

 -Bean Pole New Currents Award
   Flower in Pocket  by Seng Tat LIEW (マレーシア)
   Wonderful Town  by Aditya ASSARAT (タイ)
NETPAC
 Hello Stranger  by KIM Dong-Hyun (韓国)
 
With a Girl of Black Soil   by JEON Soo-il (韓国))
国際批評家連盟賞  The Red Awn by Shangjun CAI (中国)
観客賞  Flower in Pocket  by Seng Tat LIEW (マレーシア)
*日本からの出品作品はこちらから



多くの人々で賑わうPIFFビレッジ(上・下)



ボランティアの人々(左から3人目まで)
ボランティアには、彼女たちが着ている2色のシャツが
支給されるのだそうです

概観
 開会式から大雨に見舞われ、台風の影響も受けた天候には恵まれなかった今回であったが、華やかさは例年通り。関係者を招いてのパーティが目白押し、日刊の「スクリーン」「ヴァラエティ」も刊行、企画マーケットPPP(釜山プロモーションプラン)やアジアン・フィルム・マーケットも機能し、若手映画作家養成のための教育プログラムを併設等々、盛り沢山の内容でアジア随一の大規模な国際映画祭としての地位を確立させている。規模の拡大に伴う問題点が見受けられるのも否めないが・・。
 今年の新たな動きとしては世界的な巨匠の新作や話題作、ワールドプレミアなどを紹介する<GALAプレゼンテーション>と、有望な若手映画作家の作品を集めた<フラッシュフォワード>が新設され、全11部門に拡大。毎年優れたアジアの映画監督に贈られるFilmmaker of the Yearは今年6月に逝去した台湾のエドワード・ヤン氏に贈られ、エドワード・ヤン特別回顧展は今回の釜山映画祭の企画の中でもとりわけ好評を博した。またコンペ部門であるニュー・カレンツ部門の水準の高さは特筆に価する、との声が多く聞かれた。
 例年と同様、高級ホテルやシネマコンプレックスが立ち並ぶ海雲台(ヘウンデ)とかねてからの繁華街・南浦洞(ナンポドン)をメインに開催。この二地域はかなり離れている上に交通の便も良いとは言いがたいため、映画祭期間中は無料シャトルバスが運行された。PIFFパビリオンを中心としたヘウンデ・ビーチエリアのPIFFビレッジ」には様々なお店が建ち並び、特設野外舞台ではトークショーなど数々のイベントが開催され、学校の遠足と思われる一団や家族連れ、中・高校生のグループで連日昼夜を問わず賑わいを見せており、一種のアミューズメント施設と化していた。映画を必ずしも観に行くわけではないであろう人々にも祭りの雰囲気が行き渡っている様子である。釜山市民がいかにこの映画祭を誇りに思っているかも街の人々やボランティアの人々の話からもうかがえる。
 釜山映画祭を初回から率いているキム・ドンホ氏にフランス政府よりOfficier de lOrdre des Arts et des Lettres勲章が授与された。これまでの12回の映画祭において240以上のフランス映画が上映されたという。「釜山映画祭の顔」として広く国際的にも認知されているキム氏のヴァイタリティと温厚で誠実な人柄には多くの人が信頼と敬意を寄せている。代表者の顔がはっきり見えることが映画祭においていかに重要かをキム氏にお会いするたびに再認識する。


日本からの出品作品
 出品本数はほぼ例年通りの本数。今年は特に大衆向けの作品、プロフェッショナルな人々を満足させるアート系映画のどちらか、カラーのはっきりした作品が選ばれる傾向にあった。数ある出品作品の中でもメディアの取材が殺到、大きな話題をさらったのは「HERO」。韓国でも人気を博している主演の木村拓哉氏が訪韓したこと、釜山が舞台となっていたことなどが主な要因と思われ、5000人を収容する野外会場も満員、日本のマスコミにも大きく取り上げられた。クロージング作品に選ばれたのはアニメーション、「エヴァンゲリオン」。ある意味難解な作品だが、このシリーズのコアなファンは多いと見える。またニューカレンツ部門に2本の日本映画が入り、受賞こそ逸したものの、好意的な反応が非常に多く、他の映画祭からのご招待も舞い込んでいるという。


表彰
 第5回アジアン・フィルムメーカー賞は韓国映画の海外での普及に大きな貢献を果たしたとして、イタリアのウーディネ市で開催されるファーイースト映画祭のディレクター、サブリナ・バラチェッティ氏とシネマテーク・フランセーズのチーフプログラマー、ジャン-フランソワ・ロジェ氏に贈られた。来年10回目を迎えるファーイースト映画祭は極東アジアの国々の主に大衆的な作品を上映し続け、今ではヨーロッパにおける主要「アジア映画祭」としての地位を確立している。監督や俳優などゲストの来訪も多く、ホスピタリティにも定評がある。一方のシネマテーク・フランセーズにおいてはロジェ氏の指揮の下、数回にわたり大規模な韓国映画特集を企画し、パリ市民に韓国映画を紹介する機会を設けた。



アジアン・フィルム・マーケット会場のグランドホテル

アジアン・フィルム・マーケット
 2回目の今回は昨年同様、グランドホテルの数フロアを中心に展開された。付随するイべントもほぼすべて同ホテル内で執り行われた。4日間の日程のうち初日にこそ活気がみられたが、全体的に動きは緩やかで、静かなマーケットであったといえる。数年前にアジア(特に日本)を席巻した韓国映画ブーム(?)が去り、韓国映画を探すバイヤーが減っているのが痛い。日本から単独で部屋を押さえて臨んだのは2社とユニジャパンのみ。東京でのTIFCOM及びローマ映画祭、そして10月末からはAFMが控えており、昨年参加したものの今回は見合わせた業者も少なくないという(特にヨーロッパからのバイヤー)。釜山と東京が2週間ほどの間しかおかずにマーケットを開催するのには現実的に無理がある、と指摘する声も少なくない。比較的落ち着いて商談ができるというメリットはありつつも、やはりビジネスとしては低調、というのが参加者の正直なところらしい。セミナーなど多数のサイド・イヴェントは多彩で、オーガナイザー側の工夫が感じられた。



スターサミット・アジアの模様

スターサミット・アジア
 釜山映画祭はアジアの俳優の他国への出演の足がかりとなるネットワークを促進しようとする動きが顕著である。韓国の国民的人気俳優・アン・ソンギ氏らアジア各国の俳優で構成された<アジア演技者ネットワーク(APAN)>が発足。またアジア各国のスター俳優と有望新人を全世界の映画関係者に紹介し、世界進出の足がかりを作ることを目的として催された「第2回スターサミットアジア」には、韓国からチョ・インソンとイム・スジョン、韓国系米俳優のジョン・チョ、中国の余男(ユー・ナン)、日本の藤原竜也、三浦春馬と芦名星ら、14人の俳優が顔をそろえた。「カーテンコール」と「キャスティングボード」に分かれ、前者にはすでに実績のある俳優たちが国際舞台での活躍を、後者には主要映画人とマネージメント会社の推薦で各国の有望株を紹介することを目的としている。このサミットの発想そのものは歓迎すべきものなのだが、企画の構成内容の充実度には疑問が残る。改善を期待したい。



      
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