日本からの出品作品
 『風音』 東陽一監督
 『熊笹の遺言』 今田哲史監督 
 『空白〜述懐・ハンセン病報道〜』 井上桂子監督 
アジアフォーカス福岡映画祭 公式ホームページ http://www.focus-on-asia.com/index.shtml


概観
 
今年で第14回目を迎えた、アジアフォーカス福岡映画祭。14カ国から、27作品が集められ、10日間に渡って開催された。
 福岡市では毎年9月が「アジアマンス」ということで、映画祭以外にも、さまざまなイベントが行なわれる。地元の人々の間にも、毎年の恒例行事としてすっかり定着しているようだ。地理的にも、そして歴史的にもアジアの国々と深い関わりを持つだけに、このようなイベントを行なうのには最適な場所である。
(写真右:オープニング・レセプションの模様)

 オープニング作品は、『秘境モォトゥオへ…』(中国)。中国全土で唯一自動車道路が通っていないという、チベット自治区のモォトゥオへの道中の模様を描いた作品だ。チベットの雄大な自然、そして素朴だけれどもパワフルな内容に、会場を埋め尽くした観客達は皆、熱心にスクリーンに見入っていた。監督のハースー・チャオルー氏も挨拶に立ち、観客達からの温かい拍手に感激している様子だった。第1回目からこの映画祭のディレクターを務めている佐藤忠男氏も、「ぜひこの映画を、福岡から世界へ発信したい」と述べられ、温かい熱気に包まれた中、映画祭は開幕した。

 観客の年齢層はわりと高い。劇場公開されることの少ないアジア映画を観ることのできる機会とあって、福岡以外から訪れる人も見受けられる。地元の人々には、リピーターが多いようだ。リピーターといえば、映画祭のゲストたちの中にも、この映画祭には何度目かの出席、という人が多い。そういったゲストたちが揃って口にするのは、佐藤忠男・久子ご夫妻への感謝の言葉だ。お二人の映画に対する熱意や、その温かい人柄に感銘を受けている様子であった。もちろん、その他のスタッフのホスピタリティや、地元の人々の歓迎も素晴らしいということなのだろう。
(写真左:上映会場のロビーの様子)

 上映されるほとんどの作品の監督や出演俳優が出席するため、上映後の質疑応答、また、会場の外で直接話しをしたり、サインをもらう、というような交流の場を、一般の観客も多く持つことができる。会場の規模がほどよい大きさなので、より一層、ゲストと観客は親近感を覚えるのかもしれない。
 そして、制作国の出身と思われる人々が、それぞれの国の映画を観に来ている姿を何度か見かけた。微笑ましい光景であった。
(写真右:上映後の質疑応答の模様)

 現在の“韓流”ブームを反映してか、韓国映画はことのほか大盛況であった。今回、韓国映画は4作品が上映され、私は『オー!マイDJ』(キム・ジンミン監督)しか観ることができなかったのだが、開場前にはすでに長蛇の列ができており、人々の関心の高さが伺えた。 
  福岡と韓国は距離も近く、また、このアジアフォーカスでも韓国映画は当初から上映され続けてきた。そのような意味で福岡の人々は、このブームのずい分と前から韓国に注目してきていたのだ。韓国映画の人気に火のついたきっかけのひとつに、この映画祭の存在も少なからず影響しているといえよう。


アジアの中の日本
 
多種多様な歴史・文化・宗教が描かれたアジア諸国の映画を観続けていた中で、日本映画の『風音』(東陽一監督)を観ると、安心感を覚えると共に、新鮮味も感じた。沖縄が舞台のストーリーだ。モントリオール映画祭から帰国したばかりの東監督も出席され、観客の皆さんからさまざまな質問を受けていた。
 開催国である日本の映画の割合がそれほど多くない(27作品中3作品)というのも、この映画祭のひとつの特徴である。アジアの中の日本、という視点で日本映画を観ると、いつもとは違ったものが見えてくるのではないだろうか。そして他の国の作品を観たときには、アジアの人々のパワーと映画に対する熱意を改めて感じる。少々大げさかもしれないが、何か、映画本来の姿を見たような気にさえなる。

 映画祭の開催に伴い、いくつかの協賛企画やフォーラムなどに加え、今年は「アジア太平洋映画祭」(毎年、アジア太平洋地域の都市で開催)が閉幕日の翌日から開催されることになっていたため、アジアマンスで賑やかな9月の福岡は例年にも増して、映画の話題で盛り上がったことだろう。
 また、福岡市総合図書館の映像ライブラリーでは、映画祭で上映されたアジア映画の収蔵に努めているとのこと。ここでは毎年、映画祭の開催期間中にゲストを招いて、英語字幕付きの日本映画の試写も行なっている。実は、この映画祭ゲスト向けの施設見学・映画鑑賞ツアーに私も参加させていただいたのだが、その設備の充実ぶりに皆感心し、大喜びであった。

 このように映画を通じ、アジア諸国との相互理解を深めていくというのは、とても素晴らしいことだ。映画の発展と国際交流の両方に貢献しているという点で、このアジアフォーカス福岡映画祭の存在意義はとても大きい。
 今後もアジア映画の発信地として、福岡の地が、そしてこの映画祭がますます発展していくことを願っている。


映画祭ゲストたちの書き記したメッセージとサイン




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