Grand prix des Amerique
(最優秀作品賞)
 “La Fiancee Syrienne” by Eran Riklis (Israel, France, Germany)
審査員特別賞
 “Le Chef du stationnement” by An Zhanjun (中国)
 “Around the bend” by Jordan Roberts (USA)
演出賞

 “Le 7e Jour” by Carlos Saura (Spain/France)

脚本賞
 “Le Role de sa vie” (France)
    Written by Francois Favrat,
JulieLopes-Curval, Jerome Beausejours
芸術貢献賞
 “Elles etaient Cinq” by Ghyslaine Cote (Canada)
最優秀女優賞
 Karin Viard “Le Role de sa vie”
最優秀男優賞

 Fan Wei “Le Chef du stationnement”  
 
Christopher Walken “Around the bend”

Innovation賞
 「風音」 東陽一監督

*日本からの出品作品はこちらから


概観
 
市民に開かれた、市民のための映画祭である。監督・出演者等の記者会見は大々的に一般公開し、映画祭公式ポスターは市民からの公募作品である。通りを歩いていると目に飛び込んでくる、路上のベンチやカフェでプログラムを手に真剣に作品選びをしている人々の姿は8月末のモントリオール、St.Catherine通りの風物詩を言って良さそうだ。日曜の早朝の上映にも人々は行列をなす。老若男女問わずである。むしろ特に年配の方が多いような気さえする。彼らはいわゆる前衛的な作品も積極的に、貪欲に足を運ぶ。映画を観たいという並々ならぬ熱意を感じるとともに、それを心から楽しんでいる気楽さもうかがえる。他の映画祭に較べ最終回が早い(21時台)のは、やや遠方から市街地に来る人や年配の人々のための配慮なのだろうか。メイン会場前で連夜行われた野外上映にも何時間も前から座って談笑しながら、開始を待つ人々で賑わっている。「世界映画祭」の名前どおりに世界中から集まった映画を堪能できる一大映画イヴェントとしてのポジションは確立している。映画好きの市民は毎年心待ちにしているに違いない。私の経験した中では隣近所に座った人から話し掛けられることが最も多い映画祭のような気がしてならない。
(写真右:通りのベンチに座り、プログラムを手にする人々)

 映画祭事務局のオーガニゼーションも比較的整っており、大きな混乱はみられなかった。我々のような海外からのゲストにはそれぞれ担当者がつき、送迎の車の手配やちょっとした頼みごとなどあれこれ世話をしてくれるのもありがたい。開会式、閉会式を簡素化したのも節約の意味も強いのであろうが、効率的でゲストの大半は歓迎している変化である。

 市民のための映画祭として十分に機能している一方で、業界関係者の足がやや遠のいている印象は否めない。業界屈指の大イヴェントであるヴェネチア映画祭とトロント映画祭とほとんど同時期だという点も明らかにネックになっている。映画祭運営に当たって財政上の問題も抱えているという。累積している問題を映画祭創設者でもある代表、セルジュ・ロジック氏が来年以降どのように切り抜けるか、注視してゆきたい。
(写真左:野外上映のスクリーン)

出品作品
 長編245、中編14、短編157の総計439本もの作品が72カ国より一堂に会した。例年どおり相当な数である。全体的な傾向は観やすい、落ち着いた作品が多いが、時としてかなりエキセントリックかつ前衛的な作品にも遭遇する。それを淡々と観続ける年配のお客さん。。。モントリオールならではの光景である。Carlos Saura, Ettole Scola, Raul Ruizといったモントリオールのレギュラーとも言って過言ではない巨匠たちの作品が貫禄を見せた。またOut of Competitionとして上映されたIngmar Bergmanの新作はさすがの見応えだった。モントリオール映画祭が幅広く、深く培ってきた監督たちとの良好な関係が垣間見られる。Varietyの Critic’s Choiceと題してVariety誌の批評家が選定した斬新な作品を紹介する部門が新たに組み込まれたのも新鮮であった。

 昨年度にモントリオール映画祭は国際映画連盟(FIAP)を脱退、その後の展開が注目された。ベネチア、トロントの両映画祭との間で作品選定に苦しみがちだという事実を鑑みるに結果として選定にあたっての制約が少なくなり、むしろプラスの変化と取れなくもない。このほど来年度のアカデミー外国映画賞にフランスからの候補作品となった「Les Choristes」もいち早く上映したり、イザベル・アジャーニの特集を組むなど、今年もフランス映画の充実ぶりが目立った。
(写真右:映画祭のメイン会場)

日本からの出品作品
  東陽一監督は昨年「わたしのグランパ」でアジア部門の最優秀賞に輝くなど、モントリオールとはとても相性の良い監督である。今年は「風音」がコンペティション部門に選出された。監督及び主演の上間さんも映画祭に出席、モントリオールの温かい雰囲気、観客の生の反応を堪能していらした。結果、詩情溢れる映像美と作品の完成度が評価され、「イノヴェーション賞」を受賞。昨年度より出品作品をそれぞれの大陸ごとに分け、その中でのコンペティションを行う仕組み(観客による投票)を導入して各国のバランスを取ろうとしているせいか、日本映画の選出数がかなり減少したのは残念。「is.A」の上映に当たっては毎回監督が立会い質疑応答に応じたところ、回を追うごとにお客さんの数も増え、反応も鮮明になってきていたとの話であった。第一作目の作品をもってモントリオール入りした藤原監督に、これからの映画製作活動に刺激をもたらしたことだろう。



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