タイガーアワード
(コンペ部門)
 The Missing(BuJian) by Lee Kang-Sheng
 Summer in the Golden Valley(Ljeto u Zlatnoj)  by Sredjan Vuletic
 En Route(Unterwegs)  by Jan Kruger
ネットパック賞
(審査員特別賞)
 The Missing(BuJian) by Lee Kang-Sheng
国際批評家連盟賞
 「PEEP “TV” SHOW」 土屋豊監督
 *日本からの出品作品はこちらから



概観
 ロッテルダム市中心地にメインシアター、事務局など主だった施設が集中し、非常に効率良く映画祭を堪能できる環境にある。リピート上映のための会場もゲストの宿泊先もほとんど徒歩圏内、厳しい寒さの不利益を十分カヴァーしている。チケットシステム、ゲストサポート等信頼のおける運営体制も相変わらず。
(写真右:メイン会場のde Dolen)

 今年もシネマートは活気に溢れ、創造的なビジネスが実現する場としての機能を果たし続けていた。釜山映画祭をはじめいくつかの映画祭がこれを手本に企画マーケットを立ち上げたが、本家の面目は十分に保っている。
 地理的な利点も手伝って、パリなどから列車で週末訪れたゲスト、スカンディナビアからのゲストが目立ったように思える。

 今回は作品選定ディレクターとして8年間、ロッテルダム映画祭の確立に尽力されたサイモン・フィールド氏の最終年ということから、いつものロッテルダムらしい勢いのある盛り上がりに加えて一種独特の趣きが感じられた。タイガーアワード表彰式後にフィールド氏にロッテルダム市より'Wolfert van Borselen' メダル が授与され、氏の8年間に及ぶ功績を称えた。また北野武、カトリーヌ・ブレイヤ、アボルファリ・ジャリリといった、フィールド氏と親交の深く、ロッテルダム映画祭でもたびたび紹介されてきた映画作家たちから映像によるオマージュが捧げられた。アジア作品も積極的に紹介し続けてきたフィールド氏への感謝を込め、日本のユニ・ジャパンと韓国のKOFFICが共同でフィールド氏を労う会を開催、日韓の映画関係者が集い、それぞれが思い出話や今後について歓談する場を楽しんだ。

 世界的にいまひとつ覇気のない製作状況(本数はあるのだが・・・)を反映してか、ロッテルダム映画祭がプレミアという作品の数は少なかったようだ。
 日本からはタイガーアワード対象作品として、土屋豊監督のDV作品「PEEP "TV" SHOW」が入り、国際批評家連盟賞を受賞した。



今回のロッテルダム映画祭に出席され、国際批評家連盟賞を受賞された、
監督の土屋豊さん・脚本の雨宮処凛さん(以下敬称略)に、現地でお話を伺いました。
映画祭レポートでは初の試みとなるインタビューですが、
今後も日本からの映画祭ゲストの方々を中心に、
映画祭に対するいろいろな意見や感想などを伺っていきたいと思います。



「PEEP "TV" SHOW」は土屋監督の長編第2作目。
覗く(盗撮し、ネットでその映像を配信する)ことで他者を発見し、
自らのリアルに触れようとする主人公と、そのことに共感する少女の話。
主人公が盗撮する映像と、それをリアルタイムで放送しているインターネット上の映像、
そしてその映像を実際にパソコンで覗いている映像、
あるいは町に設置された監視カメラの映像等により重層的な映像世界が構築され、
メディア社会のリアルの転倒が表現されている・・・。

Q.ロッテルダム映画祭の印象は
土屋
自由で活気があり、そしてシステマティックできちんとしているというのが第一印象です。
以前に参加したアジアの映画祭に較べ、行動も自由で、そのパターンを好む自分としては楽です。
お客さんが好意的なのもありがたいですね。
Q.「PEEP "TV" SHOW」を観た観客の反応は
土屋
極端な反応が多かったです。あまりにも暗過ぎて救いがないじゃないかと席を立つ人もいた一方で、この作品中で描かれるどうしようもない孤独感に共感を覚えると言ってくれたお客さんも少なくありませんでした。

雨宮
(劇中で虐待される)猫はどうなったのか、という質問も多かったです。 スタッフのひとりの飼い猫で、ぴんぴんしています。こちらのお客さんは とても気になってしまうらしかったです(笑)。
それに
準主役の女の子の「ゴスロリ」(=ゴシック・ロリータ)ファッションは実在するのかどうか、 というのも。原宿などを中心にちゃんと実在しています。
Q.国際映画祭へ作品を出す意義

土屋
自分が作品中で訴えようとしていることが普遍性を持つものなのかどうかを知る良い機会です。

雨宮
なんといっても多くの人の感想を聞けるという点でしょうか。
またある映画祭へ出品することによって、さらに別の映画祭に招待されることが少なくないのもメリットです。

Q.「PEEP "TV" SHOW」を通じて訴えたかったことは敢えて端的に言葉にするとしたらどんなことでしょうか?

土屋
ネットをはじめとする仮想世界と現実との境界がおかしなことになっている、という状況の中でリアリティを得ようとあがいている人々が共感できるような映画を作りたかったと言えます。私たちは覗き部屋の観客であると同時にモデルでもあり、その覗き部屋を出て他者と出会うこと、自分自身のリアルを奪還することの闘いを描きたいという思いがありました。こうしたリアリティの混乱はもう止められないところまできていて、不可逆的と言えます。そしてそれを自覚することでむしろ突破口が開けるように思えます。
この作品中には、そういうリアリティの混乱によって困ったことになってしまった人々がたくさん出てきます。しかし、その困った感じというのは、程度の差はあっても現代の多くの人々が抱いている違和感と共通するものがあると思います。この作品が拒絶ではなく共感を生み出し、コミュニケーションへとつなげて行けたらと願っています。そうすれば、微かながらも未来に対して希望が持てる気がします。



ロッテルダム映画祭にて
写真右より:土屋豊監督、脚本の雨宮処凛さん、主演の長谷川貴之さん




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