Venezia60
 金獅子賞  
  VOZVRASCENJE (The Return) by Asndrej Zvjagintsev
 銀獅子賞(監督賞)
  座頭市 by 北野武


 銀獅子賞(審査員特別賞)
  LE CERF-VOLANT by Randa Chahal Sabbag

 
銀獅子賞(特別功労賞)
  BUONGIORNO, NOTTE by Marco Bellocchio
 最優秀女優賞
  
Katja Riemann
    (in ROSENSTRASSE by Margarethe Von Trotta)
 最優秀男優賞
  
Sean Penn
   (in 21 GRAMS by Alejandro Gonzalez Inarritu )
Controcorrente
 San Marco賞(最優秀作品賞)
   VODKA LEMON by Hinter Saleem 
 監督賞
   Michael Schorr for SCHULTZE GETS THE BLUES
 最優秀女優賞
  Scarlett Johansson
   (in LOST IN TRANSLATION by Sofia Coppola )
 最優秀男優賞
  浅野忠信
    (in LAST LIFE IN THE UNIVERS by Pen-ek Ratanaruang ) 
最優秀第一作監督作品賞
 VOZVRASCENJE (The Return) by Asndrej Zvjagintsev 
国際批評家連盟賞
 BU san by Tsai Ming Lian
観客賞
 座頭市 by 北野武


  *日本からの出品作品はこちらから



概観
 ベネチア本島からヴァポレットと呼ばれる水上バスに揺られること20~30分で、映画祭開催地リド島へ行き着く。映画祭の島として有名ではあるが、本来は本島在住の人々の避暑地、メイン会場から離れたあたりはのどかでかつどことなく優雅な雰囲気が漂う。自然とリラックスモードが支配する映画祭である。

  が、やはりそうは言っても世界3大映画祭に名を連ねる大映画祭。世界中から選りすぐられた作品が集まり、アメリカやヨーロッパ諸国からスター俳優や著名な監督が続々と駆けつけ、映画の祭典を大いに盛り上げる。VIPやゲストを乗せたボートが到着するエクセルシオールホテルの船着場付近は、スターを待つ人々で連日ごった返していた。
  今回は60回目の映画祭であったが、大きな記念イヴェントは特に催されなかった。が、半世紀以上に汎り、イタリア国内外の映画製作にプロデューサーとして関わってきたDino De Laurentiis氏(代表プロデュース作にフェリーニ「カビリアの夜」「道」「甘い生活」他、デシーカ・ヴィスコンティ・アルトマン・ベルイマン・リンチ・バズラーマン監督作他多数)がエジプト人俳優Omar Sharif氏と並んで功労賞を贈呈されたり、レトロスペクティヴもイタリアンプロデューサー18人による名作という趣旨で組まれていたりと、イタリアの産業界への配慮が強く感じられた。
(写真上:メイン会場のサラ・グランデ)

  まだ小規模ながらもVenice Screeningという名のマーケットスクリーニングが本格始動した。ベネチア・ビエンナーレ全体を統括する、Franco Bernabe氏及び映画祭ディレクターMortiz de hadeln氏はマーケット機能を付加することを大きな目的のひとつに掲げており、実際近年はビジネスの場としての役割は増してきていると公言している。結構なことだとは思う。しかし、ビジネス色の希薄さがカンヌ・ベルリンとの大きな差異であり、芸術性に富む(したがって商業ベースには乗りにくい)作品を比較的余裕を持って堪能できる点をベネチアの特筆すべき魅力として捉えている人も多い。またほぼ同時期に開催される商業的な重要性大のトロント映画祭との兼ね合いもあり、今後どのような展開を見せてゆくのか興味深い。

 映画祭事務局のオーガニゼーションは、残念ながら混乱ぶりが目についた。特にアクレディテーション発行に関しての手落ちが目立ち、ベネチア到着後しばらくの間、仮のパスで通さなければならなかったという話を少なからず耳にした。また上映開始時間が大幅に遅れるスクリーニングが後を絶たず、不満の声が多く聞かれた。

 映画祭メイン会場敷地内に、一般の人々が映画祭に関するどんなことでも自由に書き込めるコーナー*写真右があり(映画祭指定の用紙にのみだが)、様々な書き込みが掲示板を埋め尽くしていた。もちろんほとんどがイタリア語で、書かれていることの正確な内容はほとんどわからないながらも、イラスト入りのもの、英語やフランス語で書かれたものなどは十分に見て楽しめた。なんといっても観客のダイレクトな反応が伝わってくる。ここでもZATOICHIの文字は数多く見受けられた。観客賞も納得である。

上映作品
 カンヌ映画祭が不作だったことも手伝って、特に今年はラインナップが発表された時点から期待が高まっていた。いざ始まってみると例年どおり期待外れの作品、秀作とが混交していたが、総じて良作が多かったと言って良いだろう。コンペティション部門最高賞(金獅子賞)はロシアの“THE RETURN”にわたった。長年失踪していた父親の突然の帰還に戸惑い、反発する兄弟と父親との軋轢、根底には存在しているが素直には表現できない愛情、そして訪れる悲劇が強烈な映像美の中に重厚に描かれる作品。芸術性に重きを置くベネチアらしい選択とはいえ、新人監督が最高賞を獲得したという点に置いては審査員団の主張が感じられる決断である。これに対して監督賞受賞作「座頭市」は、観客の絶大な支持を得たテンポの良い娯楽作。斬新なアイディア満載の演出、主演の北野氏の魅力で観客を湧かせた。この2作品と並んでイタリアのベテラン監督、マルコ・ベロッキオ氏作“BUONGIORNO, NOTTE”が賞レースの有力候補に挙げられていた。完成度もさることながら、イタリアで実際に起こった元首相誘拐暗殺事件を取り上げていることからイタリア人には格別の感慨を持って受け入れられたようだ。

 アウト・オブ・コンペティションの部門にはウッディ・アレン、ロバート・ロドリゲス、コーエン兄弟、ジム・ジャームッシュ、リドリー・スコットといった錚々たる監督の新作が並んだ。作品の出来・不出来について、作品上映時に訪れたハリウッドのスター級俳優についてなど多くの話題を提供した部門であった。

日本映画
 久しぶりに日本映画が大きな注目を集めた回だった。話題の中心はやはり北野武監督だった。北野監督ならではのセンスで作り上げられた新「座頭市」は、批評家・観客双方に熱烈な支持を受け、今回の映画祭の中で最も話題を呼んだ作品のひとつとなった。結果として、銀獅子賞(監督賞)をはじめ、観客賞など計4つの賞を受賞。一昨年のベルリン映画祭で「千と千尋の神隠し」が金熊賞を受賞して以来の日本映画としての大きな受賞は、日本国内でも大々的に報道された。また、受賞と国内一般公開日が重なった幸運もあり、興行的にも非常に幸先の良いスタートを切った。
(写真上:「座頭市」の看板)

 またもうひとつのコンペティション、コントロコレンタ部門では、タイのペンエーグ・ラッタナルアーン監督のもと、アジアの才能が集結した多国籍映画“Last life in the Universe”で主演した浅野忠信氏が主演男優賞を受賞。この作品もたいへん高い評価を受けていた。日本での公開が待ち遠しい。浅野氏は「座頭市」でも準主役として出演しており、二重の喜びだったにちがいない。
 このコントロコレンタ部門には熊切和嘉監督の「アンテナ」、ニューテリトリー部門に廣木隆一監督の「ヴァイブレーター」が上映され、それぞれ主に批評家筋から好意的な反応を得た。



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