公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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コラム


◇テレビの名作「ヒッチコック劇場」  2012年4月16日掲載 <<コラム一覧へ戻る

  岡田晋吉


2012年
4月1日(日)〜7月1日(日)

 
映画の都 ハリウッド
〜華やかなるスターの世界〜
詳しくは、
鎌倉市川喜多
映画記念館ホームページ

 
本文でとりあげられた映画作品
 
5月8日(火)〜10日(木)
「鳥」
(1963年/120分)


監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ダフネ・デュ・モーリア
出演:ティッピー・ヘドレン
ロッド・テイラー
スザンヌ・プレシェット
 
執筆者紹介
岡田晋吉
 1935年、「鎌倉」生まれ、慶応義塾大学文学部仏文学科1957年卒業。
 石原裕次郎とは慶応義塾大学の同期である。
 1957年、日本テレビ放送網株式会社に入社。アメリカ製テレビ映画の吹き替え担当を経て、1964年から日本製テレビ映画のプロデューサーとなる。
 作品は、アメリカ製テレビ映画:「世にも不思議な物語」「幌馬車隊」など、テレビ映画としては、「青春とはなんだ!」「飛び出せ青春」「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「俺たちの旅」「俺たちの朝」「あぶない刑事」「いろはの“い”」「俺たちは天使だ!」「忠臣蔵」「白虎隊」「警視K」など多数。
 竜雷太を初めとして、松田優作、中村雅俊、勝野洋などを育てた。
 現在は「公益財団法人川喜多記念映画文化財団」の業務執行理事。

 今の若い人は知らないかもしれませんが、1957年から30分の「ヒッチコック劇場」という番組が始まりました。それまで、アメリカ製テレビ映画といえば、子供向けの「ロビンフッド」とか「名犬リンチンチン」しか放送されていませんでしたが、この番組から大人向きのテレビ映画が放送されるようになり、60年代までテレビ各局でゴールデン枠の中心的役割を果たしました。

 1957年は私が日本テレビに入社した年であり、初めての仕事がこの番組のアシスタントの仕事でした。というより、当時熱狂的なアメリカ映画のファンだった私は、この番組のお陰で日本テレビに採用されたようなものでした。

 番組の初めと終わりにヒッチコック監督自らが登場し、作品の案内をしてくれるのですが、これがまたものすごくウイットに富んでいて、声の吹き替えを担当してくれた熊倉一雄の名演技と共に大評判になりました。何年かたって、CMにも使われたほどです。勿論、監督の軽妙な話術だけでなく、中身のストーリーも最後に必ず落ちがついていて、そのどんでん返しは見事でした。これは、短編小説の面白さにも通じるものがあると思いました。特に、自宅で女性が殺される事件が多発したため、防犯のために鍵を取り替えてもらうと、その鍵屋が犯人であったり、冷凍した大きな肉塊で撲殺しておいて、凶器を調べに来た警官に、その凶器の冷凍肉を料理して食べさせてしまう話などは、いまだにはっきり覚えています。当時のアメリカの探偵小説家ヘンリー・スレッサーの作品をテレビ化した作品が特に秀逸でした。

 この番組を担当したこともあって、ヒッチコックの映画が日本で上映されると、いの一番に映画館に駆けつけました。当時の映画館には、入れ替え制などというものはなく、いつまで見ていても咎められませんでしたので、同じ映画を何回も何回も一日中見続けていました。今回上映される「鳥」も何回も繰り返し見ましたが、何回見ても恐怖に襲われました。普段は人畜無害とおもわれる鳥に、わけもなく襲われるのですから、その恐怖は倍加されます。聞くところによりますと、2万8千羽の鳥を使い、3年掛けて300箇所に及ぶ特殊撮影をおこなったといわれています。この映画がヒットしたおかげで、動物パニック映画がぞくぞくと制作され、あの有名な「ジョーズ」にまでつながっていきます。

 ヒッチコックは、自分の監督する映画に、それとなく登場することで有名です。この映画でもどこかに登場しているかも知れません。探してみたら如何でしょう。映画には、そんな楽しみもあります。

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