公益財団法人川喜多記念映画文化財団

千代田区一番町18番地 川喜多メモリアルビル

所蔵資料

資料探訪
『映画館 その3』 〜保存資料を探訪します〜


1回目を有楽町近辺、2回目を浅草と新宿を紹介してきた映画館ですが、今回は東京以外の映画館をご紹介します。

●『神戸の映画館街 湊川新開地』
 淀川長治氏遺贈写真の中から、神戸の映画館街・湊川新開地の写真です。明治の末頃にはすでに映画の常設館が多数立ち並んでいたようです。写真には菊水館の看板が写っていますが、上映作品「マクベス」の看板は隣の映画館のものです。       

「マクベス」(1914年製作・1917年公開)
D.Wグリフィス/ジョン・エマーソン監督
ハーバート・トリイ主演


●『朝日舘』
 神戸の映画館と思われますが、詳細は一切不明です。写真はやはり淀川長治氏から遺贈されたものです。
 写真の年代は看板に見える「東京市中大洪水実況」の題名から推測して、1910年(明治43年)8月中旬から9月初旬頃ではないかと思われます。この年の水害は隅田川をはじめ多くの川が決壊するという大変な災害だったようです。キネマ旬報日本映画作品大鑑によると、この水害の状況は8月19日には「水害の状況」の題名でMパテー作品が第一文明館(東京)で封切られ、8月21日には吉沢商店作品「水害の実況」が電気館(東京)で封切られています。       


●『大阪 松竹座』
 1923年(大正12年)に開館したネオ・ルネッサンス様式の豪華な劇場です。戦前は洋画の封切上映の他に、レビューなどの公演も行われていました。戦後も映画の上映館でしたが、1994年に閉館。1997年に新館が落成し、現在は歌舞伎などの上演が行われています。       


  

左:「旅順港」の封切に並ぶ人々
1935年製作・1937年公開 ニコラス・ファルカシュ監督
ダニエル・ダリュー/アドルフ・ヴォールブリュック主演

右:「旅順港」公開時のパンフレット
 

  

左:「民族の祭典」の封切には長蛇の列が出来ました
1938年製作・1940年公開
レーニ・リーフェンシュタール監督
1936年ベルリン・オリンピックの記録映画、その芸術的映像が高く評価された。

右:「民族の祭典」用に特別に作られたパンフレット
 

  

左:東京の封切用ポスターとは違う、劇場名の入った独自のもの

右:東京封切時のポスター(右、野口久光氏デザイン)
同じ作品でも、ポスターのデザインによって雰囲気が変わります。
 


●『福岡 第一映画劇場』
 客席が300人程のこの福岡の映画館については、オープンしたのが1940年か1941年ということしかわかりませんが、地方の小さな映画館のロビーやクロークが良くわかるので、載せてみました。       

上映作品(看板左):
「ハリケーン」(1937年製作・1938年公開)
ジョン・フォード/スチュアート・ヘイスラー監督
ジョン・ホール/ドロシー・ラムーア主演

(看板右):「ターザンの猛襲」(1939年製作・公開)
リチャード・ソープ監督
ジョニー・ワイズミュラー/モーリン・オサリヴァン主演

  



劇場オープン当時の内部の様子
左上:クロークの女性の上には“御携帯品預所”と掲げられています
右上:スクリーンの左手には、上映作品の上映時間などが掲示されています
下 :左手奥には“GALLERY”の文字が見えます