公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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パノラマ

続・シナリオを書いてみませんか? その3  2012年10月17日掲載

 
 

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●登場人物(1)



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 シナリオを書くためには、まず登場人物を設定しなければなりません。この人物の性格の魅力がシナリオの成功率の60%くらいを占めると思います。ストーリーは人物の動きで語られるのです。私が1975年に企画した「俺たちの旅」という番組では、脚本家の鎌田敏夫氏と相談して、シリーズ全体のストーリーをわざと考えずに、主役を演じる三人の青年のキャラクターを練り上げただけでスタートしました。初めからストーリーがあるとそれに拘束され、三人の性格が変わってしまったり、観客にストーリーの先を読まれてしまったりするので、製作者側も主人公たちが先行きどうなるのかを定めぬままに、主人公が設定された性格にのっとって、その都度どう動くかをそのまま描いていこうと考えたのです。この試みは成功したと思いますが、企画書を会社の上司に説明するのに困りました。三人の他に二人の女性が登場するのですが、誰と誰が結ばれるのかと聞かれても「わかりません」としか答えようがありませんでした。

 シナリオを書く前に、シナリオに登場させる人物の履歴書を作ってみて下さい。松田優作と中村雅俊が主演した「俺たちの勲章」という二人の刑事ドラマを企画したとき、企画書で、二人の過去を十数種類にわけて細かく設定しました。出身地はどこで、お酒の好みは日本酒か洋酒か、ひげをそるのは剃刀か、シェーバーかなどなど。これは直接ドラマでは必要のないものでしたが、この無駄のような作業が二人のキャラクターを決め、作品を面白くしました。時として、ストーリーを面白くするために、人物の性格を変えてしまいたくなることもあります。しかし、これを安易に変えてしまってはいけません。熟考すれば必ず名案がうまれるものです。この名案を考える作業がクロスワードゲームをやるようで、苦しくもあり、楽しいものでした。 (次のページへ)


 

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