公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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パノラマ

続・シナリオを書いてみませんか? その4  2012年10月24日掲載

 
 

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●セリフ(1)



「文章」になりがちですが
会話は話し言葉で書きましょう。

 いよいよセリフについて語ることにします。まず、セリフは話し言葉でなければなりません。原稿用紙に書くにせよ、パソコンに向かってキイを叩くにせよ、紙に字を書くものなので、とかく「文章」になってしまう傾向がありますが、書きたいのは会話ですから、話し言葉でないと違和感をおぼえます。その極端なケースがテレビの外国映画の吹き替えです。画面を見ないでも、セリフを聞いているだけで、日本映画と外国映画の区別が出来てしまいます。私も昔、テレビのアメリカ制テレビ映画の吹き替えを担当していましたが、英語を訳すとどうしても固いセリフになってしまい苦労しました。シナリオを書くときは、外国映画の吹き替え番組を悪い例として認識して下さい。

 セリフを日常会話として書くとき、前にキャッチボールだといいましたが、AさんがBさんに話しかけると、必ずBさんのリアクションが必要になります。このことは誰でも分かっていることだと思いますが、いざ机に向かうとつい忘れてしまいます。しかし、ドラマはこのキャッチボールで進めていかなければなりません。このリアクションのセリフが大切なのです。このセリフを気の利いたものにすると、シナリオはうまく見えます。セリフをうまく見せるテクニックとして、二つあげます。一つは語尾に「**です」とか「**します」とかあまり断定的な区切りをつけず、後のセリフにつなげるように書くことです。書きたいことを急がずゆっくり何回かに分けて書くのです。それと同じ語尾が続くのも耳ざわりです。これも気をつけましょう。二つ目は、セリフの順序を「文章」のときと逆にして書くことです。普通「文章」では「暑かったので、冷房を入れた」と「原因」と「結果」をこの順序で書きますが、セリフでは「冷房を入れたよ、あついから・・・」という具合に結果を先に書きます。

 セリフはそこに書かれている具体的な事実を観客に伝えるだけでなく、そのニューアンスで言外の情報を伝えることが出来ます。二組の夫婦が、食事をしているとします。その場合、誰かのセリフで「お母さん、このごろ少し弱ったかな」と言えば、この二組の夫婦は兄弟であると分かります。また、セリフに親しさの差を盛り込めば、男同士の兄弟か、女同士の姉妹か、あるいは、男と女が兄弟かが分かります。誰と誰が夫婦かは、席の取り方で暗示できるでしょう。説明的なセリフは面白くないし、避けなければいけないことになっていますが、このようにして、なにげないセリフでその状況を観客に伝えるようにしましょう。 (次のページへ)


 

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