公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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パノラマ

続・シナリオを書いてみませんか? その1  2012年10月3日掲載

 
 

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●20枚シナリオ(2)



作者の視点こそが作品の
良し悪しを決めるものです。

 20枚シナリオを上手に書くもう一つの秘訣は、最後に“落ち”をつけることです。落語を研究して下さい。面白い落語には必ず“落ち”がつきます。新聞の「嘘クラブ」欄などにもこの感覚を見かけます。読者が思いもかけなかった結末を用意するのです。また、主人公に二つの選択肢を与えて、読者が望まない方の選択肢を選ぶのもこの手の一つで、読む人に強い印象を与えられます。その“落ち”で、主張したいと思っていること――視点――を具現化すればなお素晴らしいシナリオになります。この作者の視点こそ作品の良し悪しを決めるものなのです。前にも書きましたが、シナリオの良し悪しは、ただストーリーをこね繰り回すのではなく、あなたが何を書きたいか、どう思っているのかの視点を魅力的にはっきり書くことです。ありきたりであったり、もう既に評価の定まった考え方であったりせず、あなたの特異な視点を見つけて下さい。

 ではその視点はどうやって見つけるのでしょう。それは、好奇心と観察力から生まれるものです。あなたの日常の身近な出来事から、あなたが思いついた面白い出来事を書き上げればいいのです。ただし、その視点が他人を傷つけたり、上から目線で書いたものではいけません。謙虚で、前向きで、書いている対象物に愛情をそそいでいることを感じさせなければ、読む人に感動を与えることはできないからです。

<その2へつづく>   

執筆者紹介 岡田晋吉

 1935年、「鎌倉」生まれ、慶応義塾大学文学部仏文学科1957年卒業。
 石原裕次郎とは慶応義塾大学の同期である。 1957年、日本テレビ放送網株式会社に入社。アメリカ製テレビ映画の吹き替え担当を経て、1964年から日本製テレビ映画のプロデューサーとなる。 作品は、アメリカ製テレビ映画:「世にも不思議な物語」「幌馬車隊」など、テレビ映画としては、「青春とはなんだ!」「飛び出せ青春」「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「俺たちの旅」「俺たちの朝」「あぶない刑事」「いろはの“い”」「俺たちは天使だ!」「忠臣蔵」「白虎隊」「警視K」など多数。 竜雷太を初めとして、松田優作、中村雅俊、勝野洋などを育てた。
 現在は「公益財団法人川喜多記念映画文化財団」の業務執行理事。

 

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