公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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パノラマ

続・シナリオを書いてみませんか? その2  2012年10月10日掲載

 
 

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●シナリオ構成(1)



思いきったアイディアで
主人公の人生を変えて下さい。

 シナリオ構成について、昔から「起承転結」という言葉が言われています。「起」の部分は物語の設定や登場人物の紹介をするわけですが、最近のシナリオでは、いきなりドラマを始めてしまい、ストーリーの展開の中で説明していくという方法が採られています。テレビが始まってチャンネルを変えられないために出来るだけ早くストーリーに入りたいと思うようになったからかも知れません。「承」の部分では見る人をなるべくスムーズに引き込むことを考えなければなりません。主人公はこれからどうなるのだろうと興味を抱かせるのです。そして「転」。シナリオの中で、ここが一番大切です。思い切ったアイディアを出して、主人公の人生を変えて下さい。刑事ものでいうと、犯罪の種類を知らせるのが「起」であり、捜査活動が「承」、犯罪の全貌が分かるのが「転」、そして、犯人逮捕が「結」です。ただし、これは基本形で、この形を崩して構成していかないと観客は満足してくれません。一つのストーリーの中に、いくつも「転」があったり、犯人に逃げられてしまうのが「結」だったりします。ただ、「転」は観客の意表を突くものであることが必要であり、「結」は観客が見終わって納得するものでなくてはなりません。

 前に、ドラマではストーリーを考える上で、「あべこべ」にすると効果があると書きましたが、犯罪もので一番犯人らしい人が犯人でないというのも典型的な「あべこべ」理論にもとずくものです。言い換えれば一番犯人らしくない人を犯人にすればいいのです。その場合、本当の動機を設定するか、アリバイを崩すか、そこに面白いアイディアが必要です。「あべこべ」と同時に「置き換え」という手法も便利です。ある有名な脚本家に「物語はどうしますか?」と尋ねた時に、「どの映画で行こうか」とつぎつぎに映画の題名が出てきたことにはおどろきました。有名な映画のストーリーの「起承転結」をいただいてしまおうというのです。さすが腕のある脚本家、出来上がった作品は元の映画の起承転結の形をふまえつつ、独自の肉付けをして、全く違う佳作に仕上げていました。これがプロの技でしょう。 (次のページへ)


 

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