公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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川喜多賞

第12回川喜多賞
マルセル・ジュグラリス氏 元ユニ・フランス駐日代表


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●選考理由

マルセル・
ジュグラリス氏

 マルセル・ジュグラリス(Marcel Giuglaris)氏が1950年代に来日されてから、日本とフランスの映画文化交流に果たされた、パイオニアとしての業績は大きなものがあります。
 1922年、南フランス・ニースに生れた同氏は、エクス・マルセイユ大学文学部などに学び、1947−1949年、テアトル・ペルシ劇団を主宰、日本の能を上演、早くも日本文化への関心を示しています。1949年、ジャーナリストとして活動を始め、1951年以降パリ・プレス、次いでフランス・ソワルの特派員として、極東の各地で取材にあたられました。
 来日後、1956年に「日本映画1896−1955」をフランスのセール出版社の第七芸術叢書の一冊として刊行しますが、これは外国人によって書かれた最初の日本映画通史となりました。今もって外国語で書かれた日本映画に関する基本資料でもあります。
 ジャーナリストとしての活動を続けながら、1959年にフランス映画の海外宣伝機関であるユニフランス・フィルム駐日(極東)代表に就任。20年余にわたる在職期間中、数回にわたるフランス映画祭の開催、パンフレットの定期刊行によって、日本におけるフランス映画の紹介に努めました。
 一方本来の業務とは別に、日本映画のカンヌ国際映画祭出品に積極的に協力、衣笠貞之助監督「白鷺」、市川崑監督「おとうと」、浦山桐郎監督「キューポラのある街」、小林正樹監督「怪談」などの名作が、毎年のように出品されることになりました。
 同氏は1982年に離日されましたが、在日中の同氏に協力した若い映画人の中から、現在わが国の映画文化の国際交流の第一線で活躍されている方が多く生まれている事実は、マルセル・ジュグラリス氏の影響力によるものと、あらためて思いあたるのであります。
 同氏の著作は数多くありますが、前記の他、石原慎太郎著「太陽の季節」のフランス語訳(1955年)、「日本へのヴィザ」、「太平洋に負けた日本」(ともに1958年)、「真実の日本」(1965年)、「Vietnam:Le Jour de l'Escalade」(1966年、「北爆」の題名で日本でも翻訳出版された)などがあります。
 また、同氏は、大戦十字勲章(同氏のレジスタンス活動に対して)、国民功労賞(シュヴァリエ)、レジスタンス勲章、芸術文化勲章(シュヴァリエ)、1983年日本映画ペンクラブ賞(日本)を受勲・受賞されています。

      

      
贈賞式の模様(1994年7月27日)


ジュグラリス氏の代理で賞状をお受け取りになる、秦早穂子氏(左)





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