公益財団法人川喜多記念映画文化財団

千代田区一番町18番地 川喜多メモリアルビル

パノラマ

シナリオを書いてみませんか? その4  2012年9月11日掲載

 
 

 コラム一覧へ戻る

 
 

●「セリフ」について(2)



シナリオセンターの勉強法、
「20枚シナリオ」はお勧めです。

 次に、私が若い脚本家によく注文することを二つ挙げてみますので、参考にしていただきたいと思います。第一にする注文は、シーンの最初と最後のセリフを大切にして欲しいということです。最初のセリフはこれから何が起こるかを期待させるものでなくてはなりません。昔はよく挨拶から入ったりしましたが、今はそんなまだるっこしいことはしません。いきなりパンチが効いたセリフで、要件に入った方がいいと思います。最後のセリフはもっとも観客の頭に残るものですから、より魅力あるセリフを厳選して書くことを要求しました。捨てセリフで笑いをとったりすることもありますが、余韻を残して次のシーンへと移っていってもらいたいと思うからです。実際、このセリフが冴えるとシナリオ全体が良く見えます。

 会話の中に、第三者が登場するとき、単に彼とか、あの人とかいう代名詞を使うことがよくありますが、これはなるべく避けてもらいたいと思います。その人物の映像的特長を添えるとか、そのセリフをいう人物にとってどういう位置関係の人物かを分からせる必要があるからです。とかく作者が知っていることは観客も知っていると誤解してしまいます。登場人物は知っているが、観客は知らない。逆に観客は知っているが、登場人物は知らない。シナリオは、この関係を絶えず意識して書かなければなりません。

 実際にセリフを書くとなると、まだまだいろいろな問題や疑問が浮かんでくると思います。しかし、シナリオは先ず書いてみなければ始まりません。そして、他人に読んでもらい、他人がそのシナリオをどう理解してくれたかを知る必要があります。他人に読んでもらうと思いもかけなかった反応がかえってきて面白いこともあります。他人の評価をもらって修正していくことがシナリオ上達の早道なのです。とにかく、何でもいいから書いてみることです。「こどもシナリオ教室」を手伝ってくれたシナリオ・センターでは、「20枚シナリオ」という勉強法をとっています。最初から長いシナリオを書くのではなく、先ず、身近な経験を20枚(200字×20枚)程度のシナリオにして、完成させるのです。この練習法はお勧めです。そして、自信をつけてから、長いものにも挑戦してみて下さい。


<その5へつづく>   

執筆者紹介 岡田晋吉

 1935年、「鎌倉」生まれ、慶応義塾大学文学部仏文学科1957年卒業。
 石原裕次郎とは慶応義塾大学の同期である。 1957年、日本テレビ放送網株式会社に入社。アメリカ製テレビ映画の吹き替え担当を経て、1964年から日本製テレビ映画のプロデューサーとなる。 作品は、アメリカ製テレビ映画:「世にも不思議な物語」「幌馬車隊」など、テレビ映画としては、「青春とはなんだ!」「飛び出せ青春」「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「俺たちの旅」「俺たちの朝」「あぶない刑事」「いろはの“い”」「俺たちは天使だ!」「忠臣蔵」「白虎隊」「警視K」など多数。 竜雷太を初めとして、松田優作、中村雅俊、勝野洋などを育てた。
 現在は「公益財団法人川喜多記念映画文化財団」の業務執行理事。

 

 コラム一覧へ戻る